ローカル線を訪ねて・・・北条鉄道③

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 終戦が近づいた1945年3月31日16時頃。
 当時の国鉄北条線(現在の北条鉄道)の田原(たはら)駅~網引(あびき)駅間で、その事故は起こりました。

 by camera: nikon f3



 
 その日、法華口駅近くにある旧姫路海軍鶉野(うずらの)飛行場の戦闘機 「紫電改」 が試験飛行中、エンジン不調で不時着してしまいます。

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 その飛行機の車輪で線路がゆがみ、直後に通過した列車が脱線、転覆しました。
 死者11人のほか、重軽傷者104人にのぼる大惨事となってしまいました。

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 しかし、事故は 「軍の機密」 とされ、原因となった戦闘機墜落の事実は伏せられたまま。
 事故を報じた新聞も 「旅客車が脱線転覆、死傷者多数」 などと数行の記事を掲載しただけでした。

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 当時は戦時下で、事故は軍の機密事項として扱われ、公に出ることはついぞなかったのです。
 
 その事故の慰霊看板が縦一メートル、横二メートルのステンレス製で最近、やっと設置されました。

 事故で夫を亡くした方。
  「軍の機密といわれ、人に悲しみを伝えることもできず、自分を責め、泣くことしかできなった。
 看板によって事故の事実を知らせることができるだけでも、うれしい。」

 こんな穏やかな田園風景の広がる場所にまで、悲劇はおよびました。




 さて、chikazoが、今回のたびで北条鉄道で最後に降り立った駅。

 法華口(ほっけぐち)駅。

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 こちらは法華口駅の入口。

 駅舎は1915年(大正4年)3月3日開業時以来のもので、当時の面影を今もよく残していました。 

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 駅のホームは、今も広々とした田園風景のなかにあります。

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 この駅でみつけた新聞記事です。
 
 「特攻へ向かった道」 とあります。

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 全国的にはあまり知られてはいませんが、この法華口駅の近くに約60年前に役目を終えた旧海軍の滑走路が、当時のままの形で残っています。 

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 太平洋戦争は1942(昭和17)年6月のミッドウェー海戦を境に、日本に不利な状況へと向かうことになります。

 
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 軍はパイロットを短期間に多数養成するため、各地に訓練用の飛行場を急造します。

 兵庫県内でも、加西郡(現・加西市)南東部の鶉野(うずらの)台地に、海軍の飛行場建設が決定し100戸以上の民家を立ち退かせ、同11月ごろ着工。
 
 近隣住民や朝鮮人労働者らを大量動員し、翌年9月、突貫工事で使用開始にこぎつけます。

 その翌月、パイロット志願の兵士を訓練する姫路海軍航空隊がここに設立されたのです。

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 その後、戦局がますます切迫し、南の海ではとうとう悲劇的な特攻が始まります。

 同航空隊でも1945年になると、若き男子たちによる特攻隊 「白鷺(はくろ)隊」 が結成。

 ここで訓練を受けた63人の若い兵士が、各地の航空隊へと赴き、沖縄近海の米艦目掛けて突っ込み、散っていきました。

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 まさにこの駅の風景こそが、まだ若き少年がひっそりと死地に赴くべく向かった道。
 「特攻へ向かった道」 でした。

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 この駅看板の消えかかっている下の文字は、戦争前。
 上の文字が戦後のものだそうです。

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 駅前の桜の木。
 
 この風景は当時と、きっと同じでしょう。

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 この駅のベンチからの風景も同じだったのかな。

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 反対側の長く使われていないホームには、大きな木がありました。

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 戦中当時は、軍需物資や人の往来がさかんだったそうです。

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 今は、とってもしずかな駅に戻っていました。 

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 空襲や銃撃もあったようです。

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 駅舎の前には、先ほどの大きな桜の木ときれいな花壇が整備されていました。

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 さて・・・いよいよ北条鉄道の昭和の風景ともお別れです。

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 電車を待つホームからの風景。

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 降り立ってから、だれとも会わなかった静かな駅でした。 

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 折り返しの列車がやってきました。

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 さあ、家へ帰りましょう。

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 その列車の窓からは、コスモスがきれいに咲いているのが見えました。


 北条鉄道のたび。 

 長きにわたりご覧いただき、感謝です。 

   
               chikazo より
by chikazo-toto | 2008-10-28 22:02 | おでかけ・兵庫